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すきなものをすきなときに

   
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ただ、春を待つ
ネタ出し

▼禅←星←平
▼劉禅がとても酷い・ドクズ
▼劉封は史実の劉禅が生まれる前に養子に来た設定



▼基本設定▼

家臣の間では劉封派(養子だけど劉禅より前に劉備の子となる)と劉禅派(劉備の正統な実子)で分かれている
二人の個人的な間は決して剣呑では無く普通の兄弟の仲だが、自分についてくれている家臣の間が喧々諤々しているからちょっとぎこちない、よそよそしい
劉封は戦場も任されていて武より 劉禅は文より
劉禅は戦場まかせられるくらいの覇気があれば…が欠点
劉封は正統な血でさえあれば…が欠点
実子という事もあり劉禅派がやや優勢(当時の常識として血統が全て よほどの事が無い限り劉禅を差し置いて劉封が引き継ぐのは難しい)
初めから男児の兄弟がいたとしても後継者が長子であるときちんと明示されていれば内部抗争は泥沼化しないが、劉禅が生まれる前に劉封を養子として迎えてしまっていた事が事態をややこしくしていた。
この後継者問題に直面した時、おそらく内部でモメるだろうなと表立っては言わないが皆思っていた。
そして外部の敵よりも、内部の問題が一番軍にとって瓦解しやすい要因だという事も。

劉封、関平、星彩はよく一緒に剣の稽古を城内の広場でやっている
公の場では遠慮しているけど、三人は親友同然で冗談を言い合ったり武を競い合っていた
三人のその姿を昔の劉備関羽張飛の姿の再来のようだといつも武将達は微笑ましく見ていた



その日も広場で三人は日課の稽古をしていた。
劉封がふと上を見ると、劉禅が城の上に居てこちらを眺めている。
気がついた劉封は劉禅に対して手を振っていると、関平が「どうしたの?」と聞いてくる。
「ほらあそこに禅が…」って指差そうとすると、城壁に居た筈の禅の姿はいつの間にか消えている。
もしかして劉禅は、劉封と関平と星彩の三人がこうして訓練していて劉禅がそこにいない事をあまり良く思っていないのでは無いか、と劉封は暗い気持ちでそれを呟いた。
関平も劉禅様の心境はそうかもしれない…と二人で押し黙っていると、星彩が珍しく笑ってそれをなだめる。

男の人の方が繊細で女々しい想像をするのね 劉禅様はそういう思考で動いたりしないから大丈夫よ…

関平と関羽は劉備とは別行動、荊州に留まり守りを固める事となった。
戦況はますます激しくなり、とうとう荊州にいる関親子は孫権・曹操の挟撃に遭い大ピンチに
関羽は劉封に援軍を要請したが、劉封・孟達はこれに援軍を出さず、結果として関親子は戦死
さらに劉封は上庸を失った事がますます拍車をかけ、かくして劉封は劉備により死を賜る結果となった

劉封が明日死を賜る、その日劉禅は城壁の上で一人何かを眺めていた。

星彩は劉禅を見つけると、後ろから近づき隣に立つ。
劉禅の事を一番知っているのは、周囲でおべっかを使う文官や女ではなくおそらく星彩ひとりなのだ。劉禅がどこにいるのか、他の家臣は探し出す事ができなくても星彩にはそれができた。
何かを眺めていた劉禅は星彩の姿を認めると、彼女の方に振り向いた。
「ああ星彩、これを見て御覧 綺麗だねぇ」
劉禅の言うこれというのを見てみると、そこには春を迎えた大木に花がつき、甘い匂いを振りまき咲き誇っていた。
そのまま城壁に手をつき、黙ったまま星彩は身を少し乗り出して下を覗き見る。
そこから見える景色は、稽古の広場。
かつて、関平と劉封とそして自分とが、いつも剣の特訓をしていた広場。
負けず嫌いの星彩は男二人に交じって汚れるのも怪我するのも構わずに一心不乱に稽古をしていた。
劉封と関平は、特訓が終わるといつも馬鹿みたいにふざけ合っていた。
でももう関平はここにはいない。
そして劉封も、もう、ここには戻れない。明日からはもう戻れない。
「劉封殿が、明日死を賜るそうです」
抑揚なく星彩は事実だけを劉禅に報告する。勿論劉禅がその事を知らない筈は無い。筈はないが、星彩はそれを伝えた。
相変わらず普段と変わらないゆったりとしたしぐさで、劉禅は星彩と同じように淡々と返事をした。
「そうだね」
劉禅は樹木とその花をを眺めながら、星彩はかつての稽古場を見下ろしながら会話する。
「もし兄上があの時関羽殿に援軍を出していたら、そしてそれによって関羽殿が、関平が死んでいなかったら何かが変わっていたのかな」
「兄上も今日という悲劇を迎えずに済んだのかな」
「それとも、兄上と私が逆の立場だったら違ったのかな」
それまでじっと黙ってそれを聞いていた星彩はそこで初めて反射的に劉禅の方を向き、言葉を遮った。
「止めて下さい」
星彩の真っ黒な目が劉禅を射した。
「本当は思っていない事を言うのは止めて下さい」
劉封は明日死ぬ。
それは関親子を間接的に殺してしまった責任であり、軍事的な損失を出した責任であり、そして劉封が劉備の息子であったからだった。
劉禅と、劉封が劉備の息子として同時に存在してしまったからだった。
「そうだね」
いつもと変わらない、何か薄い膜で覆ったような茫洋とした微笑みの顔のまま劉禅は答えた。
星彩は苦しそうに眉を潜めて、視線を自分の手元に移す。
何を考えているのかわからない劉禅の心に、星彩は一番近い人間だったのだ。
彼がそんな事を言っても仕方がない事も、この件に関して劉禅に非が無い事も、そして劉禅は本当はそんな事を真剣に思ってはいない事も知っていた。

「星彩は関平に告白されたそうだね」
劉禅は突然話題を変えた。
劉禅と話すといつも関連性の無い会話の集合となる。だからこれも劉禅が深い意味を込めて話題を変えたというわけでは無い。
明日死んでしまう兄の話を避けたかったわけでも星彩と関平の仲に何かを感じたわけでもない。
だからこんなにも簡単に、普段の日常のように、何でも無い事のように、ただ疑問に思ったから劉禅は星彩に尋ねる事ができるのだ。
「どうして是と言わなかったの」
関平が荊州を守るため父と共にその地に留まり星彩と別れる時確かに関平から告白をされたが、星彩はその想いを断っていた。
それは、それは―――――
胸にせりあがってくる思いにそれ以上堪える事はできず星彩はその場にしゃがみ込んだ。

星彩は劉禅の事を一番よく知っていた。
劉封と関平と三人でいつも稽古をしていた事を、劉禅が羨ましいと思いでここから眺めていたわけでは無い事も知っていた。
劉禅がこの大木の蕾をただ見ていただけの事を知っていた。

「ああ、本当に綺麗な花だね。この花の名前を知っているかい星彩」


 

星彩が関平を断ったのは劉禅の事が好きだからだよぉ
今は亡き関平の告白の話題を平気でできる、そしてそれには全く悪意の無い劉禅の無神経さ
明日迎えてしまう兄の死よりも劉禅の一番の関心ごとは花の名前である
劉公嗣はただ春を待つ

 

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